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大学を3年留年した私が、その経験を活かし 障がいのある子どもたちの特性を活かすために考えていること

 私は大学に7年間通いました。浪人も1年間していたので同級生より4年間遅れて社会に出ました。自分の特性に悩まされ、今後の人生に不安を抱いていた時、ある出会いから障がいを持つ子どもたちのサポートをする仕事をすることになりました。子どもと一緒に自分も成長できる、とても素敵なお仕事です。

  どうしてそんなに卒業まで時間がかかったのか。私は「学校に行く」「課題を締め切りまでに出す」というような簡単なことができませんでした。その行為までにたくさんの壁があり、乗り越える術を見つけるまでに膨大な時間がかかりました。原因を考えているうちに、自分の様々な特性に少しずつ気付いていきました。

  私は大学留年中、ゲームに大ハマりしていました。オンラインで人と対戦するバトルロイヤルゲームです。Twitterで知り合った人たちとコミュニティを作り、1日平均1012時間ゲームをする生活を1年間ほどしていました。私の働く放デイにもゲーム好きの子どもが来ますが、小学生にして私と同じようにゲーム中毒気味な子も来ます。私は初め全く違和感がありませんでした。むしろ「お!何のゲームなんやろ」くらいです。ですが、親御さんは本当に困った様子でした。片親で仕事から離れられないため子どもの面倒が見切れない。「助けてください」と私たちを頼ってきました。私たちの放デイではドローンのプログラムがあり、その子はそのトレーニングをしていくことになりました。

  ドローンプログラムは主に発達特性のある子が行うプログラムです。ゲームのコントローラーのようなもので操作します。ゲームをよくする子たちは、力まずにコントローラーを操作する指先の感覚が既にあり、初めから操作が上手です。さらに、私の話も耳に入らないくらい集中します。放デイの時間が終わると、「え、もう1時間経ったの?」と時間も忘れて熱中しています。ひとつのことに集中できる特性ですが、その集中力を発揮するにはたくさんの壁があります。私が大学時代に数多く経験した脱落ポイントです。

 例えばドローンの接続。ドローンは複雑な機械なので、エラーが多いです。うまく接続できないと、子どもたちはすぐにドローンに興味をなくしてしまいます。なのでまずは指導員がいなくても1人で飛ばせるようになるまでトレーニングします。そして様々なエラーが出た際に1人で解決できるようにします。視覚優位の子や、漢字が読めない低学年の子、発達遅れのある子、いろいろな子がいますが、どんな子が来てもその子1人で行えるマニュアルを作るため、とにかく作業を細分化、視覚化しました。

こうして一つの脱落ポイントをなくせたわけですが、脱落ポイントはまだまだあります。そういったポイントをつぶしていき、「あ、この子集中してる」と実感した時は涙が出るほど嬉しかったことを覚えています。私も脱落ポイントが多く、たくさん失敗してきた人生だったからこそわかるものもあり、同じような特性の子のよさを引き出す楽しさを実感しました。

  放デイで子どもたちがトレーニングしているのと同様に、私もこの職場で今までの遅れを取り戻そうと必死にもがいています。留年したことによって自分がたくさんの人に迷惑をかけたのは100も承知ですが、そのことについて自分としては全く後悔していません。むしろこれから長い間の人生を歩んでいくにあたって、自分と向き合い理解する時間として必要な時間であったと考えています。そしてそんな自分を成長させてくれる恩師や同期、私と同じような子どもたちと一緒に成長できるこの環境に出会えたきっかけもこの留年中でした。これからはこの経験をより多くの子どもたちのために昇華していき、1人でも多くの子どもたちの将来が明るいものになるよう願っています。

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