恐怖の「それ大事だから忘れないでね」

「それ大事だから忘れないでね」って言われること、ありませんか。これを言われたら、一部のADHDの人にとっては相当な恐怖です。持ってくるものを忘れないでほしい、受け取ることを忘れないでほしい、やることを忘れないでほしいなど。内容は関係ないのです。忘れないということ自体に大きな恐怖があります。だって、忘れてしまいますから。

こんな話をすると、大抵の方は「メモをとればいい」「大事なことだから忘れないこと自体が当たり前」「優先順序が低いんだろ」「社会人なんだからきちんとしろ」のようにおっしゃいます。言っていることはすごく真っ当。何も間違えていません。おっしゃる通りだと思っています。そして、自分でもやり遂げたいと思っています。

でも、できないのが一部のADHDの人の特性です。忘れないように工夫はします。例えば、Googleカレンダーに書いてみたり、自分にメールを打ってみたり、他人にお願いしたり、手にメモをしてみたり、近い時間のものであれば口の中でそれを繰り返し喋ったり。でも、そうした工夫は一瞬で無になります。別のことが入ってきた瞬間に完全に記憶から飛びます。そして、無かったことになります。

何かしらの「記録」をしていればまだマシです。自分にメールを送信していれば後で見られますし、Googleカレンダーに書いていれば確認もできます。でも、それは締め切り前とは限りません。後のこともしばしばです。しかも、その前に別のことが入ってきたら大変です。「あれ、どうなった?」と言われて、覚えていたら御の字。完全に生まれて初めて言われたような気持ちで受け取ることも多いです。当然相手は怒ります。「言ったのに!」となります。でも言われた覚えすらないのですから、何が何だかわからない中で「ごめんなさい」です。狐につままれたような気持ちの中で、謝罪をします。

先日もありました。私とAさん。どちらも、そんなADHDです。

ある方から言われました。「書類をAさんに預けたから必ず受け取って!忘れないでね」と。「やばいなぁ、絶対忘れるなぁ」と思ったので、私、自分にすぐにメールを打ちました。「Aさんから書類を受け取る」それだけで送信。これで最悪の事態は避けられます。そう思っていたら、別の方から電話が入ってきました。話終わったら完全に書類のことを忘れていました。それからAさんと3時間は一緒にいたのに一度も思い出しません。書類はAさんのカバンの中。さようならと別れて、メールをチェックしてから気がつきました。書類をもらっていない、と。結局、郵送対応でことなきを得たのですが、残ったのは自己嫌悪。

そういうもんなんですよね…今回は誰かに迷惑をかけたのではなく、ただ遅れただけ。それでも自己嫌悪は収まりません。もっとなんとかならないのかなぁ、と思いつつ、直らないから特性なんだよなと。

でも、ダメなことばっかりでもありません。こんな特性だからこそ、たくさんのことに目がいきますし、いろんなことに挑戦しようとも思えます。せっかくそうやって生まれ育って、ここまできたのですから、上手に自分の特性とお付き合いしていこうと思います。

と、今回は自分のお話でした。

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