通常学級への編入、大丈夫?

通常学級への編入、大丈夫?


「K’s club サロン」は、発達外来クリニック医院長・小児科医である河野政樹ドクターと特別支援教育のスペシャリストである小野隆行先生によるQ&Aが発信されるオンラインサロンです。
サロン内では皆さんからドクターに質問することも可能です。
本ページでは、K’s club サロンでの質問と回答を一部紹介します。

今回の質問は、下記のものです。

特別支援学級5年生の男子。来年度通常学級に編入したいと保護者が言っており、本人もその気です。生活面は苦労すると思いますが、通常学級でトラブルなくやっていけると思います。
心配なのは、学習面です。気分にかなりムラがあり、国語のテストは3時間かけてやったり、算数などの嫌いな学習は彼のペースでのんびり進めたりしていました。
もし4月から通常学級で過ごすとすれば、困り感を減らすために2学期と3学期で彼にどのような指導をしていけばいいでしょうか。

□小野先生
私は、特別支援教育コーディネーターでしたので、これまで務めてきたいくつもの学校で転籍の相談を受けました。今まで何人も特別支援学級から通常学級に戻してきました。

戻していく中で基本的にやっていたことがあります。特別支援学級は簡単に言うと、福祉サービスです。なので、特別支援学級は通常学級ではできない支援や方法を活用できる権利を持ちます。その中で特別支援学級を利用しながら、通常学級・集団教育で必要なことをうまく運用していけば、二通りの方法を選択できる場にいるということになります。

通常学級に戻した瞬間に、福祉サービスを受けられなくなるので、それを受けなくても全然大丈夫、受けずにやった方が総合的に見て、その子にとって得があると思えば、進めます。また、進めるのであっても環境要因が一番大きく寄与するので、その集団が安定した集団なのか、あるいはクラス替えがあっても安定した集団が担保できるのかどうかが大切です。

そして一番大きな環境要因は先生です。この先生に任せて、次の新しい担任になっても担保できるのかというリスクを考えること。そして、今後どんな先生が担任になったとしても、その環境の中で自分なりにやっていける自信があること。保護者もサポートができ、レジリエンスが身に付いている状態ならよいです。それでも苦労するかもしれないし、困るかもしれない。でも、これで後悔ないよなという状態を作ります。そのため、練習期間は長い子で1年半くらいとりました。私も編入する児童を受け持ったことあります。特別支援学級に在籍している児童を1年間かけてトレーニングし、校長先生にお願いして校内の規約のようなものを作ってもらいました。このくらい準備をし、デリケートな形でやっていきます。なぜならその子の人生だから。

せっかく福祉サービスを受けられる状況にいるのです。場所や地域によっては、特別支援学級に入りにくい場合もあります。入った方が絶対に良い、と保護者も子どもも先生も思っていて、さらには歴代の先生も校長先生も進学先の中学校が思っていても、定員があって入れない、予算の関係で入れない、ということがあります。その中で入れているのに手放すのは難しいです。
そして質問の回答ですが、トラブルがなくやっていけるというのは関係ありません。生活面で苦労するのであれば、それは学習面でも相当すると思います。そして、学習面でそのような状態ということは通常学級の方法で今は取り組んでいないですよね。それなのに、本人も保護者もその気になっているというのは、合意形成が得られていないと思います。

もちろん、通常学級に編入しても特別支援的な配慮は行いますが、できることとできないことのリスクについてお話しした方がいいと思います。

行政の立場で言えば、よっぽどの条件がない限りもう一度特別支援学級に戻るというのは難しい自治体が多いです。
以上のことを把握したうえで話し合いをするべきだと思います。

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※本記事の内容は「K’s club サロン」の一部です。お子さんの発達や障がいなどについて、さらに詳しく知りたい方は下記をご覧ください。

〈引用〉
K’s club サロン
K’s club サロン:発達障がい関連グッズ


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