障害者雇用に関する助成金 〜その課題と可能性〜

今まで障がい者と関わる事のなかった大学生Aさんにお題について答えて貰いました。今回はまず回答を共有させていただきます。
「障害者雇用に関する助成金
〜その課題と可能性〜」

 障がいのある方々がその能力を最大限活かして働くには、人々が彼らををひとくくりにして、何もできないと決めつけるのではなく、個々の能力をきちんと見る必要があると思います。

 現在の日本には、障がい者を雇用すると助成金が給付される制度があります(特定求職者雇用開発助成金など)。この制度は一見すると、企業が障がい者を積極的に雇うインセンティブになり、障がいのある方々がより職を手に入れるチャンスが広がる素晴らしいもののように感じます。しかし、私腹を肥やすためにその制度を悪用したり、障がい者にとって良い環境を提供しているとは言えない企業も一定数存在します。
 
 悪用の例としては、実際は雇っていないのに雇っていると嘘の申請をしてお金をもらう場合などがあります。この場合は、虚偽罰金や刑事告訴、不正を行った企業名の公開など罰則があります。
 しかし、このように明らかな不正行為ではなくとも、その労働環境が障がいのある方々の幸福につながらないものであった場合はどうでしょうか。
 
 例えば、雇用された企業での業務内容が、障がいのある方々とそうでない方々で全く違うことなどがあげられます。基幹業務と全くかかわりのない、障がい者のためだけにわざわざ用意した簡単な仕事をさせる場合などです。これは、障がい者の社会進出や自立を促進し、社会の多様性を認める社会を作ることを目的とする特定求職者雇用開発助成金の意義にそぐわないのではないでしょうか。
悪意や故意でなかったとしても、助成金獲得や雇用率達成ののために障がい者を雇い、その障がい者におざなりな仕事をあてがうのは、障がい者個々人の能力を無視し、尊厳を奪う立派な差別行為ではないでしょうか。
 
 これまでの歴史を振り返ると、本当は能力があるにもかかわらず、その属性だけで“半人前”であるとみなされてきた人たちがいます。例えば、アフリカ系の人々は、「野蛮だ」「知能が低い」とされ、白人に劣っているとされてきました。しかし、様々な活動や法改正、人々の意識が変わったことにより、アフリカ系の人々もほかの人種と同じように社会で活躍できるようになってきました。
また、日本ではもともと女性は男性に劣っており、男性の補助的な業務しかできないという偏見に基づいて男女別の採用が行われてきました。1985年に制定された「男女雇用機会均等法」により一般職と総合職に採用形態が変わったことにより、女性の能力の可能性が社会で認められるようになりました。そして法整備から40年弱の間、女性が総合職で活躍してきたからこそ、今日では女性も男性と同じように働くのが当たり前となってきました。
今でもまだ一般職に女性が多いですが、すべての女性が能力において男性よりも劣っていると決めつける人はもういないのではないでしょうか。

このように差別され難しいことはできないと決めつけられていただけで、本当はそうではないと人々が気づくことによって選択肢を与えられた人々がこれまで多く存在してきました。次は障がいのある方々の番ではないでしょうか。

 ただ障がい者を雇えば助成金を支給するのではなく、その雇用形態や業務内容がその個人に合ったものであるかをきちんと考えたうえで雇用・配属することも助成金を受け取る条件にするべきではないでしょうか。

 今後、日本が世界の中で飛躍し豊かになっていくには、ジェンダーや人種の多様性を認めることもそうですが、障がいのある方々も社会に参加し、多様な価値観があふれる社会にすることが必要ではないでしょうか。

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