朝の準備に時間がかかる子。どうすれば改善できる?

朝の準備に時間がかかる子。どうすれば改善できる?

 

「K’s club サロン」は、発達外来クリニック医院長・小児科医である河野政樹ドクターと特別支援教育のスペシャリストである小野隆行先生によるQ&Aが発信されるオンラインサロンです。
サロン内では皆さんからドクターに質問することも可能です。
本ページでは、K’s club サロンでの質問と回答を一部紹介します。

今回の質問は、下記のものです。

小3 男子
朝の準備に時間がかかる知的障がいの子。
カードで「ランドセルの絵」「連絡帳の写真」「宿題を入れるボックスの写真」など提示していますが、ボーっとしたり、寝そべったりして、なかなか準備が進みません。ランドセルをしまうだけでも1時間目の開始時間までかかることがあります。楽しみなことがあると少し早くなります。
やらなければならないが、やりたくない、できないと感じているようです。連絡帳を書こう、と声をかけてもすぐには行動に移せません。この児童が朝の準備が時間内にできるようにするには、どのような対応をしたらよいでしょうか。

□小野先生

幾つかの要素が絡まっているので、分けてお答えします。

まず、連絡帳というのはなかなか書けないです。こちらからすると、ただの連絡なのでそこまで難しくないように思うかもしれませんが、そうではありません。視写をさせているのです。この問題は、きっかけをつくってあげるだけで全然違ってきます。スタートのきっかけを視写させるのです。最初のところに、数字や日付を赤鉛筆で薄く書いておく。最初から全部しなさいというと、なかなかスイッチが入らないですが、赤く書いたらここから書くんだな、と何も考えずに動けます。「動く」というところのスタートのゾーンに入れてあげないといけない。そこに時間がかかっていますね。

写真で提示するというのは、一つの手段で方法としては悪くはないです。写真というのはちゃんと手順がわかり、やりやすい方法です。けれどもこの子は、やる順番をわかっていないからできないのか、あるいは気が散ってできないか。3年生ですし、手順はわかっているが、ただスイッチが入らないのかもしれないですね。だから、どうやったらスイッチが入るのか、ということを考えてみた方がいいです。「これだけできたよ」って褒めてあげながら、徐々にできることを増やし、早くしていく。「これだけ早くできたらこういう楽しいことができるよ」と自分でできるようにする。自立です。その部分に数ヶ月かけてあげてください。

何か楽しみなことがあると少し早くなる。これはスイッチが入っている状態です。となると、私だったら片付けが終わった後に何か楽しいことができる、とします。何が好きなのか、何をして遊びたいのかを考える。早く頑張ったら、余暇の時間を過ごせる、そのように組み立てていきます。しかし最初はやはり難しいので、一緒にやってあげる。「最初何だったかな?」「ランドセルを置く」など言わせることによって動かしていく、といったように。
全部任せて「やりなさい」と言ったり、全部手伝う、または全部やらせる、言って聞かせる、写真のカードだけ見せる、というのは0か100なので、あまり効果的ではないです。

寝そべったりして、なかなか準備が進まない。というのも、片付けをした後に連絡帳を書かなければならないのは、面倒くさくてなかなかできないです。私は知的学級を持っていた時は、1時間目の学習の1番最初に連絡帳を書くとしていました。レターボックスを5段式にしておいて、1番上は最初にすること、2番目は次にすること、として1番最初に連絡帳を書くようにしていました。
私が行っていた学校の連絡帳は、バインダーのようなファイルを買って、紙をバインダーに挟んでいくという仕組みをとっていたので、それをそのまま活用していました。なので1番上の段の紙には「最初に日付」、とか1時間目にするようなことを赤で少し書いている紙をそのまま入れとく。最初はずっと書いていました。次第に赤を少なくしていくような形にしていって、最終的に全部できるようになったね、って褒めてあげる。
だから1年生の知的の子なんかは、1年間をかけて最終的に自分でできたという状態でよいです。すごいね、できたね、ってとにかく褒めて、困ったら手伝ってあげるという形です。そうしないとなかなかできないです。

「3年生なんだけど」って思うかもしれないですが、1,2年生のときにどうやっていたのか。低学年の時はできていたのに、3年生でやらないのは先生との関係かもしれないし、環境の問題かもしれないし、ぼーっとすればしなくていいということも覚えたのかもしれない。要因はいろいろ考えられます。けれど、この方が書かれているように基本方針は、終わったら楽しいことがある、得をするということをつくるそれからきっかけをつくる。ランドセルを机の下に置く、机の上に置く、それからランドセルを開けた後に荷物を取り出す、ということも一つ一つ手間がかかることです。だから、抵抗感なく簡単にできる方法に、全部一つずつ変えていかないといけない。私から見ると結構大雑把に見えます。

こういったことをヒントにしてやってみてください。

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※本記事の内容は「K’s club サロン」の一部です。お子さんの発達や障がいなどについて、さらに詳しく知りたい方は下記をご覧ください。

 

〈ドクター〉
河野政樹(虹の子どもクリニック院長)

〈引用〉
K’s club サロン
K’s club サロン:発達障がい関連グッズ


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