不登校の子。 学校に来られるようになっても焦りは禁物?

不登校の子。
学校に来られるようになっても焦りは禁物?

 

「K’s club サロン」は、発達外来クリニック医院長・小児科医である河野政樹ドクターと特別支援教育のスペシャリストである小野隆行先生によるQ&Aが発信されるオンラインサロンです。
サロン内では皆さんからドクターに質問することも可能です。
本ページでは、K’s club サロンでの質問と回答を一部紹介します。

今回の質問は、下記のものです。

不登校の児童生徒が、毎日1時間くらい相談室に登校できるようになった後、
なかなか教室に行けなかったり、活動時間が長くならなかったりするケースが多いです。
また、学校まで送迎してもらって来ることはできても、車からは降りられない、昇降口まで来てすぐ帰るというようなことを繰り返し、
なかなか回復しないケースも多いです。
これは、無理に登校させることで、せっかく溜めた心のエネルギーがなくなっているのではないかと考えています。
不登校における回復期から助走期、復帰期にスムーズに進むためにはどうすればよいですか?
また、一度部分登校をやめるべきという場合があれば教えてください。

□河野ドクター
学校に行くことと教室に入ることは、別次元の話です。その間にはものすごく大きな谷があり、その谷を越えるためにはよほどしっかりした橋がないと渡れません。そのため、橋の前までは来られるようになったけれど、目の前の大きなつり橋が風でぐらぐら揺れているところを、さあ渡れと言っても、固まってしまうのは当たり前です。

しかし、将来的にそのぐらぐらと揺れているつり橋は、成長と共にしっかりした橋になっていきます。なので、その橋のたもとまで行くこと、そしていずれはその向こうに渡りたいなという気持ちにさせることは、決して無駄ではありません。「そこまで行ける」ということが大事なのです。

学校に行けるのであればそれでいいので別室登校もOKだと思います。学校の下駄箱まで行き、先生に挨拶して帰る、車で来て先生と挨拶をする、連絡物を渡して帰るというのでも、十分成長します。なので、焦ってはいけません。ここまで来られたのなら教室まで行けるのではないかと考えるのは、つり橋の手前まで来られたのだから、このつり橋も渡れるでしょうと言っているのと一緒で、本来はそこから先が大変なのです。

以前、学校へ行くことがしんどくてなかなか登校できず、私の診療にもなかなか来られない子がいました。ですが、私に会うのは大好きなので、駐車場まで来ることができる、ということだったので、いつも駐車場で少しだけ窓を開けて話をして帰るということをしていました。その子は小学校にはあまり行けませんでしたが、そのうち学校の先生と時々会えるようになりました。中学校にもあまり行けませんでしたが、支援の先生などが時々会いに来てくれました。そして、ある日突然勉強したいと言い、勉強したものを先生に見せたいと言って、小学校から全く勉強をしていなかった子が、決して上手くはない字で一生懸命ドリルを解き、最終的には通信制の高校を卒業して社会に出た、というようなケースもあるのです。

やはり、その子にとって何が必要なのか、何ができるのか。無理やり学校へ行かされて元気がなくなって帰って来るだとか、毎日の放課後登校の行ける日がだんだん減っていくことがあっても、それは焦ることではありません。もう一度仕切り直してもいいのかな、というサインだと思いますし、10分でも20分でも、毎日学校に行けているのであれば、それが毎日登校ということでいいですし、別室登校でもいい、というのが私からの答えになります。

※内容の全部、もしくは一部の無断転載を禁止します。
※本記事の内容は「K’s club サロン」の一部です。お子さんの発達や障がいなどについて、さらに詳しく知りたい方は下記をご覧ください。

 

〈ドクター〉
河野政樹(虹の子どもクリニック院長)

〈引用〉
K’s club サロン
K’s club サロン:発達障がい関連グッズ


関連記事一覧