大学生が勤続年数35年の障がい者雇用の秘密に迫りました!前編

今回は、千葉県にあるエフピコダックス千葉工場さんへお伺いいたしました。
㈱エフピコの特例子会社である、エフピコダックス㈱。エフピコは、食品トレー・容器の製造販売を行う会社です。

業界においてシェアナンバーワンの実績を誇っているエフピコですが、注目を浴びているのが「障がい者雇用」です。エフピコでは、35年以上前から障がいのある方の雇用に積極的に取り組んでおり、現在グループ全体で365名の主に知的に障がいのある方を正社員として雇用しています。障がい者雇用率12.6%と、2.3%の法定雇用率を大きく上回る驚きの数字です。
しかし、本当に驚くべきはその数字だけではありません。エフピコの障がい者雇用の方針は「基幹業務においての正社員雇用」です。例えば、世の中では製造メーカーの障がい者雇用でお花を栽培するなど、基幹業務とはかけ離れた作業を雇用率達成のためにおこなっているケースも多く見られます。エフピコでは、彼らがやらなければ健常者を雇うような仕事、彼らがすることで利益になる仕事=トレーの会社でトレーを製造する仕事に障がい者を雇用しているのです。
日本には多くの人が生活しており、その人の数だけ考え方が存在します。障がい者に対してネガティヴな考えを持っている人も少なくありません。「彼らは弱者だから」「無理させてはいけない」「ほんとに働けるの?」「何もできないんじゃない?」などなど…。まだまだ偏見の目も多いこの日本で、障がいのある方々の人財化・戦力化に成功したエフピコの障がい者雇用の現場をどうしても見てみたい!そして、そこから何を感じるかを体感してみたい!と、取材のお願いをさせていだきました。

エフピコダックス千葉工場では、20名の主に重度の知的障がい者を雇用しており、様々な食品トレーの製造を行っています。特徴は、勤続年数35年の障がい者が複数名働いているという点です。現在でこそ、就労支援に関わる制度や体制が整ってきており、比較的長く就労定着する方も増えてきましたが、知的に重度の障がいのある方々が、働くことは本当に稀であった30年以上前から、エフピコダックス千葉工場では正社員としての給料を支払い、それに応える仕事ぶりで彼らは会社に貢献してきたのです。
どのようにして35年働き続ける事ができたのか…どのようにして戦力化に成功できたのか…他の会社と何が違うのか…今の障がい者雇用の問題‥‥今回はその謎を少しでも知れたらなと思います。

統括部長さんに会社内を案内してもらいました。ここで働く障がいのある方たちの業務は8時30分から始まります。まずは着替え、工場では一切の異物の侵入があってはならないため、何度も従業員同士のチェック、管理が徹底しています。そして、60分のお昼休憩を挟み17時30分まで8時間勤務をしています。これを聞くと、「そんなに働けるの?」と思う人もいるかもしれません。しかし、彼らにとって働くことは何も特別なことではなく普通の事なのです。毎日朝起きて休まず仕事に行く。それが長く務めた今では当然のようにできているのです。しかし、最初からこのようだったわけではないと聞きました。
では、エフピコダックスと他の会社では何が違うのだろうか。どのようにして今の作業形態に至ったのだろうか。この質問に統括部長さんは「前提が違う」と言われました。他社では雇用率達成のための雇用が多い中、エフピコダックスでは基幹業務においての正社員雇用を目指しているため、そもそもの前提にある考えが違う。人財化・戦力化が前提なのだから、そのために彼らができるまで一緒に挑戦するし何度も失敗する。そのたびに方法を考え、能力的に定着させ、長所を伸ばし「自分がやらなければ誰がやる」と教えていく。仕事へのプライドを作り、人間誰しもが欲する存在価値をこの会社の中で生み出し、彼らとともに仕事を、そして成長をしてきたのだと。そして何より大事なのは、「気持ちでぶつかること」と、仰っていました。
その言葉を聞き、私はとても感動しました。一見、根性論に聞こえる人もいるかもしれない。けれど同じ人間同士、理屈じゃないのだと思う。エフピコダックスは当初、専門的に障がい者の支援を学んだ人はいなかったそうです。他の人より少し彼らと関わる機会が多かっただけ。健常者たちも何もわからないところから始めた。だからこそ、彼らと素で話す。もちろんうまくいかない事もあるし、ケンカもある。しかし、どこまでも諦めずに気持ちでぶつかって関係性を築き、今のエフピコダックスがあると統括部長さんは話されました。

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