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小学校4年生が障⇔障継承プログラムを使ってインクルーシブ(多様性)を学ぶ1/2

小学校で初めて障⇔障継承プログラムが使われました。2022年2月4日(金)。京都教育大学附属桃山小学校。ICT教育を全国でも最先端で導入した学校です。その4年生。授業者は井上美鈴教諭です。

 

「授業研究会」という、全国様々な方が学びに来られる授業の発表会です。参加者は全国から約200名。4年生1クラスのみの公開にも関わらず、これだけの方が関心を寄せてくださっていること。その中で、障⇔障継承プログラムを使っていただけることに感謝です。

 

200名の参加ではありますが、教室はガラガラです。全国からの参加者はオンライン。それだけではありません。一部のお子さんもオンラインで授業に参加しています。いつもよりも少ない人数に、カメラマンを付け足しただけの人数です。

 

カメラマンは、京都教育大学の学生さん達です。子ども達の様子を、前から、後ろから、横から撮り、ライブで全国に中継してくれます。これもICT推進校の培ってきた技術。そんな状態の中で、障⇔障継承プログラムから1名のみ参加してよいと許可をいただき、学校へ寄せていただきました。

 

コロナ禍の学校訪問。こちらも最大限の準備をします。1週間前からいつも以上の体調管理。直前のPCR検査。体温測定。消毒。教室に入ってからも子ども達には近づきません。2つの教室を縦に繋いだ縦長の教室の一番端っこへ。一番近いお子さんでも5mはあります。写真を撮るのも、めいいっぱい拡大をして撮る形。それでも、子ども達の授業の様子を肌で感じられます。

 

授業20分前。まだライブ中継前です。いつもなのでしょうか。子ども達は座ってiPadを使っています。ロイロノートというノートアプリを使って、手書きで図を書いたり、タイピングで文字を入力したり、写真を貼り付けたり、様々な作業をしています。

 

授業10分前。シーンとした教室には、カタカタとタイピングをする音しか聞こえません。トイレ休憩と先生がおっしゃって、一気に空気が緩みます。

 

そして授業開始。授業の流れは、次のような形でした。

 

①これまでの学習内容の確認

②発表の練習を近くの友達とする

③動画を見て自分で勉強になったことの発表

④「働いて生きている」障がい者が少ないこと、その工賃が低いことを知る

⑤その理由を考え、発表する

 

授業開始と同時に先生が「今200名くらいの方が画面の向こう側にいます」と子ども達に伝えると「おーっ」とどよめきが上がりました。「では、その画面の向こうの先生方に今まで何を勉強してきたかを教えてあげてください」というと一気に手が挙がります。元気な子ども達です。

 

①、②とスムーズに進んでいきます。大人から見られること、私が子どもの頃であれば緊張したでしょうが、このクラスの子どもたちは全く気にすることなく授業に集中しています。

 

【③動画を見て自分で勉強になったことの発表】

「思ったよりも笑顔で働いていて意外だった」

「自転車で通勤できていることに驚いた」

「自分にできることをがんばると言っていて、そうだな、と思った」

4年生の感性、鋭く、正直です。

いくつもの発表がありましたが、全体的に「もっとできないと思っていた」という空気感が伝わってきます。

 

【④「働いて生きている」障がい者が少ないこと、その工賃が低いことを知る】

「動画のように働く障がい者は全ての障がい者の1%未満」という画面が出た時、子ども達が「えーっ」「マジか」「そんなに?」「なんで」という声が入り混じりました。

その声に先生が「なんでだと思う?」と質問をします。

 

「障がいがあったら働けないと周りの人が思うから」

「優しくしてあげないといけないから」

「働かせないで守ってあげているから」

といった回答が返ってきます。

 

この質問は投げかけだけで終わり、先生が次の画面を出します。

『A型事業所79,625円、B型事業所15,776円』

 

学校教育では、お給料に関する学習をすることは稀です。経済的なこともほとんどしません。お金に関することは、お年玉やお小遣いくらいです。その中でこの額を見せる。彼らからすると、なかなかの大金です。数値が写っている画面をそういった目で見ています。

 

「月です。一ヶ月働いてもらえるお給料です」と先生が説明しました。

 

数秒、止まって、ある児童が言いました。

「無理や」

続いた言葉が、

「お年玉より少ない」

でした。

 

【⑤その理由を考え、発表する】

「どうして働く人が少なく、額が少なくなっていると思いますか?」

先生の一言で、みんなが考え始め、メモを取っていきます。

 

小学4年生なりに精一杯考えていきます。そして発表です。

「他の人よりできないところを見られるから」

「働けるのであれば、いっぱい働いて、もっとお給料をもらってほしい」

「パソコンを使う人は、私たちよりもずっとできる人だった。工場の人もそうだった。それを知らなかったので大人も知らないのかもしれないと思った。」

 

発表の途中でチャイムがなり、先生がまとめます。

「たくさんの発表がありましたね。それを考えていくことが、これからの勉強になります」

 

子どもたちの意見。核心をついていると思いました。彼らの意見は大人の考えの縮図です。大人の何気無い普段の行動や発言で、子どもたちを導いています。

 

でも、その子どもたちが変われば?

そのきっかけに障⇔障継承プログラムがなれると考えています。

 

次回は、この授業をオンラインで閲覧した学校の先生や福祉関係の方たちとの事後研究会の様子です。

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