乱暴なお子さんの言いなりになる我が子について

「K’s club サロン」は、発達外来クリニック医院長・小児科医である河野政樹ドクターと特別支援教育のスペシャリストである小野隆行先生によるQ&Aが発信されるオンラインサロンです。
サロン内では皆さんからドクターに質問することも可能です。
本ページでは、K’s club サロンでの質問と回答を一部紹介します。

今回の質問の概要は次のようなものです。

幼稚園年長の母親からの相談

我が子のいいところは優しいところです。

困っていることは、周りにいる乱暴なお子さんたちとの関わりです。

そのお母さんたちは、自分の子どもたちが、先生を困らせていることを知りません。
にぎやかにしている状態を先生がお母さんたちに伝えると「それをちゃんとさせるのが先生の役割」と返しています。そのため、先生はケガがなければよいと見守るだけになっています。

我が子は結果的に我慢することが多く、乱暴なお子さんの言いなりになっています。
私は「よくガマンしたね」と家に帰ってから褒めるしかありません。

このような正直者が馬鹿を見るような状態は、小学校に入っても続くのでしょうか。
あと半年もガマンしなければいけないのでしょうか。

■小さい子はそもそもしっかりしていないのではないか
悩ましい状態かと思います。
こういう状態は、あるといえばあるのです。

私は昭和の人間なので、遡って考えてみると、いつもそういう状態でした。
理不尽の塊。
世の中だから、いろんな子がいます。
その中で辛い思いをしたり、しんどい思いをしたりします。
でも、これが集団の中にいるという一つの社会体系のような気もするのです。

最近、よく感じるのは、大人たちが子どもに対して「早く大人になればいい」と思っていることです。
幼稚園の子がしっかりしておいてほしいと思っているのではないか、と。
しかし、小さい子はそもそもしっかりしていないのではないでしょうか。

3歳くらいの女の子が、お母さんと一緒にいる場面を見ました。
お母さんは両手に大きな買い物袋を持っている。
女の子はキャリーバックのようなものを引いている。
お母さんはサポートしきれません。
その子は一生懸命にキャリーバックを引いてついていくのですが、どうしても遅くなります。
お母さんは、
「しっかりしなさい!」
と繰り返し女の子に言っていました。

これを見て、私は「3歳の子はしっかりしないよな」と思いました。
同時に、今の日本は3歳の子どもにしっかりを求めるのかなとも思ったのです。

我が子が周りに迷惑をかけていても、放っておくのはどうかなとは思います。

質問を出されたお母さんのように家に帰ってから「がんばっている」「すばらしい子だな」と声をかけることもありだと思います。

■多様性の中を生き抜く
だからといって、乱暴な子や元気過ぎる子が一概にピシッと整列させるような幼児教育が本当に望ましいのかも考える必要があるのではないでしょうか。

多様性の中にその子が育つことが幸せなのか。
多様性のないところで育つことが幸せなのか。

こうしたことは価値観の違いがあるのかもしれません。
人類の歴史からすると、多様性を失ったものが滅ぶのは目に見えています。
より多様性のあるものを許す世の中こそが、生き残る上では大切です。

そのように考えると、お子さんの経験は「正直者が馬鹿を見る」ではないと思うんです。
その中を生き抜いているお子さんを認めることは意味があることだと思います。

「半年間ガマン」というのは、しょっちゅう暴力を受けていたり、泣かされていたりというようにターゲットになっている場合は別です。
しかし、複数の子どもさんにという場合は、その環境を生き抜くことに意味があるのではないかと思います。

選べば、恐らく規律の厳しい幼稚園や保育園もあります。
それはそれで、ルールを守り続けなくてはいけないというストレスは相当です。
雑多の中とは違うストレス。
これが子どもたちにかかっていきます。

Aがよいのか、Bがよいのかということは選び切れません。
もう少し広い考え方をするのはあり得るかと思います。

私の師匠は、いつも一つのことだけを教えてくれました。
来られた人が子どもでも大人でも選択肢を広げることが大切だ。
あなたの関わりがその方の選択肢を狭めるのであれば、望ましいことではない。
ですから、選択肢を広げるようなアプローチがいいと思います。

色々な考え方があるとは思うのですが、お母さんに求められているのは、
自分の価値観との戦い
なのかもしれません。

自分自身の子育てや信条、こうしたものが揺さぶられているでしょう。
これを乗り越えれば、このお母さんは、ご自身の考えが広がるかもしれないし、成長されるかもしれません。
そして、何よりもこの状況下でお子さんを褒めているのはすばらしいと思います。

片側の考え方によってはいけないかと思い、両面からお話しさせていただきました。

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※本記事の内容は「K’s club サロン」の一部です。お子さんの発達や障がいなどについて、さらに詳しく知りたい方は下記をご覧ください。

〈ドクター〉
河野政樹(虹の子どもクリニック院長)
〈引用〉
K’s club サロン
https://hikarinoniji.supersale.jp/about#mainabtkuMDE1Mj
K’s club サロン:発達障がい関連グッズ
https://hikarinoniji.supersale.jp/categories/3084689#mainidxkyLjg4Mz
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